オピタルドンフォン
オピタルドンフォン=小児病院。
私のこれからの職場。
挨拶して中を見せていただいた。
これからここにお世話になるんだ。
スタッフと早く仲良くなれるといいな。
どんな医療環境なんだろう。
赤ちゃんに早く会いたい。
どんな疾患の子どもがいるのかな。
家族対応や育児の習慣ってどうなんだろう。
こっちの看護師さんってどんな感じで働いてるんだろう。
どんな医療ケアが出来るんだろう。
彼らにどうやってアプローチしていこうかな。
就職してから5ヶ月も病院を離れたことはなかったので、久しぶりに仕事するという不安もしかり。
ワクワクとドキドキ。
看護長は、事前に前任の方に伺った通りとても素敵な方。
勿論、赤ちゃんはやっぱり可愛い、癒し。これは万国共通なんだと再認識。
しかし、よく見ると日本の小児現場では考えられないようなことも沢山あり、とても衝撃的。
ハラハラして、思わず手を出したくなるようなことも度々目の当たりにする。
それでも現地の看護師、助産師、医者。
私の事前の予測より、彼らはとても熱心に仕事をしていた。
モロッコでこんなに仕事頑張っている人たちをはじめてみた。
彼らはみな仕事にプライドと誇りをもって働いており、彼らの中の彼らなりの常識的な医療を善意をもってケアしている。その熱意をとても感じた。
「見学してみる?教えてあげるから、ついてきなさい!」
という感じであった。
だから、私は彼らの頑張りやプライドや誇りに関してはしっかりとリスペクトしなくてはならない。
ただ、私が日本でやってきたことと違うこともしているだけで、日本も昔はきっと同じだったのだろう。自分を納得させようとする。
彼らも私も、赤ちゃんのために頑張って仕事をしている。
だから、向き合うのではなく、同じ方を向けるようになれば上手くやれるはず。
たぶん。
同じ方を向くまでが一番大変そう。
私が見てきた世界と彼らの見ている世界があまりにも違いすぎる。
ただ、今も治療を頑張っている赤ちゃんの苦しむ様子を見ると、とても手や口を出したくなる。
とても出したくなるけど。
もし今、手や口を出したら、
「よそ者が偉そうに!私たちのことに口を出すんじゃない!」と言われ、
恐らく、病院で干されるのではないかという雰囲気。
やはり、看護は女の世界。
それも万国共通だと認識。
事前に予測していた通りだったが、
ここでうまくやるためには、はじめの私の我慢が大切なんだと改めて痛感。
とりあえず、始めは関係ができるまで何も言わず、私を受け入れてもらえるまで我慢。
でも、どうしても目の前にいる赤ちゃんを思うと胸が苦しくなる。
別に特別な機械や道具やお金がなくても、知識さえあれば、すぐに変えられることは沢山あった。
ここをこうしたら、この子は呼吸がもっと楽になるのに。
そうしたら、酸素が減らせるかもしれない。
ここにタオルを入れたら、赤ちゃんの姿勢がよくなるのに。
そうしたら、この子の発達が全然変わってくるのに。
こんなに音をたててケアしないほうが、赤ちゃんの発達がよくなるのに。
そうしたら、結果的に入院日数も短くなるのに。
ここにこれをおいたほうがスタッフの導線が楽なのに。タイムロスも沢山。
沢山のこうしたらが、私に押し寄せる。
どうしたら、彼らに伝わるかな。
どうしたら、私の考えを受け入れてもいいと思うかな。
自分の苦戦する様子が目に浮かぶ。
非常に不安だ。
弱音を吐いてしまう。
そもそも、自分自身フランス語で医療ケアできるレベルではまだまだないし。
日本で新生児の認定持ってるわけでもないし、日本で働いた年数だって、外で威張れるもんではない。
まだまだ、私だって看護の修行中。
これは永遠に続いて、いつまでたっても終わらない。
だから、看護は楽しい。
でも、比較的現状に満足しがちな国民性に感じとれるモロッカン。
違う価値観の中に一人で飛び込んでみる私。
さて、どうしたら、わかりあえるかな。
二年かけて、少しずつ、少しずつ。
まずはスタッフと仲良くなれるように。
続く。