受診 アイデンティティ

ロッコの受診システムは、日本と異なり、患者さんが重症であればあるほど辛い思いをすると感じている。入国してきてすぐに体調を崩したときは、冗談にできないほど具合が悪かったが、今回はとても元気な体調不良である。

 

 モロッコのクリニックの受診の流れについて。

①まず、近所のクリニックへ電話して時間を確認する。

もちろん、電話せず飛び込みで受診できるが営業時間中でも医師がいないこともあったり、長時間待機する必要があったりするため、具合の悪い人にはあまりお勧めできない。必要に応じては往診できる医師もいる。私は事務所の推奨するクリニックがあり、そこの医師はとてもよい診察とケアをしてくれる。

②受診し、診察を受ける。

仕事の中でも日々感じているが、この国の医師のスキルは個人差が非常に大きい。誰が主治医になるかで大きく変わってくる。日々悶々と考えさせられる…私には大きすぎるこの国の問題。

私の行くクリニックでは、体重と血圧、サチュレーションと脈拍の測定はスタンダードに行うよう。今回は、喉と耳の診察、胸部の聴診があった。症状を見て必要な観察ポイントをちゃんとおさえてくれていた。私は問診ですらすらとその場で症状の経過を伝えられないので、予め経過を手紙に書き診察室に入る前に医師に渡しておいた。その後、ボディランゲージと単語で状態を訴えて伝えたら、理解を得たようだった。

会計をする。検査がなければここで薬の処方箋が渡される。

③検査室へ移動する。

医師から診察結果を言われ、採血などの検査が必要な時は、検査室へ移動する。その検査室は、クリニックに併設しているわけでなく、他の場所に独立して「検査室」として機能しており、そこに看護師や検査技師が勤務している。検査結果は即日に出せる場所と物もあるが、場合によっては、1週間程度かかることもあるよう。

④クリニックに戻る。

必要な場合クリニックに戻り、検査結果を医者に見せる。必要な場合、大体は内服のために医師から処方箋がわたされる。

⑤薬局へ行く。

薬局で必要な薬を確保する。薬の種類が多かったり、使用頻度の少ない薬の場合は、1か所ですべての薬を集められないこともあるため、薬局をはしごしたりもする。でも、ここにないけど、あそこならあるかもしれないなどと教えてくれたりもするし、どれくらいの頻度でいつ飲めばいいかと薬の箱に書いて図示して教えてくれる。とても親切である。

⑥晴れて帰宅。

 

体調不良にはとてもしんどい作業が待っている。体調が悪くて辛いときほど受診が辛いと日本人の感覚の私は思ってしまう。でも、モロッコ人のことだから、結果治ればいいし、体調がわるければ家族で協力するだろうし、受診に時間と手間がかかるなんて、気にしないんだろうな。

 

今回は、スマートに受診するため、医師の携帯に受診したい旨を予めメッセージで送っておき、クリニックへ顔を出し、医者が来たら電話してと受付のおばちゃんにお願いし、所用を済ませてから、医師の出勤時間に合わせて診察してもらった。モロッコでこんなに物事がスムーズに進められたなんて、自分のなかでは大きな進歩である。なぜか私は一週間後に採血せよという指示を医師からもらった。甲状腺値の検査項目が入っていた。状腺機能低下などを疑われているのか…血圧が低めなのも、体重が少なめなのも日本にいるときからでこれがノーマリーだと訴えたが聞いてくれなかった。朝食に豆乳を飲んだと言ったら、「なぜ?」聞かれた。好きだからと返事したら、「はぁ?」やれやれというような反応…でも腕がいいからこれからも何かあったらこのクリニックにかかるつもりだ。そして、前回もお世話になった比較的大きな薬局なら揃うかと予測しやはり一発で一通りの薬をそろえ、飲み方を説明を一つずつしてもらい、昼食を確保して帰宅した。体調もそこまで悪くないため、楽に感じた。2回目だから要領をつかんでいるし、前よりもアラビア語が話せるからかもしれない。

今回はとても元気であったし、日本にいたらこれくらいでは仕事を休まない。でも、ここがモロッコであるということを考えると、絶対にこれ以上具合を悪くしたくない。この国で入院するようなことだけは避けたい…入院したらもっと具合悪くなったり、ほかの感染症をもらうのではないかと思うほど現場の環境を厳しい。体調管理の重要性をひしひしと感じる。モロッコで流行る感染症の多くは高熱がでないらしく、多少具合悪くてもみんな動き回ってしまう、そもそもマスクをするなんて考えもなく…感染症を移しあっているという現状もあるらしい。確かに今回私が体調を崩し始めた頃に、町でも職場でもくしゃみや鼻汁のある人が増えていた。

1か月のラマダーンの断食でみんな疲れて、栄養バランスも崩れて、抵抗力が下がったところに感染症が蔓延したのではないかという憶測が沸き上がってしまう。もちろん、ラマダーンアッラーの教えに則り断食することはリスペクトする。

 

家に帰り、食事をとり薬を飲み寝るが、体温が中途半端でなかなか汗をかけない。このままでは長期化する可能性がある。それは私にとって非常によくないこと。我が家の教訓なのか?子どもの頃から「風邪をひいたら集中して寝て、水分を沢山とって水分をたくさん出していっぱい汗をかいて、気合を入れて一晩で治せ!」といわれてきた。私は大体風邪をひいて熱がでても、食欲もあり、身体も動けることが多い。学生の頃は、熱が出ていてもマスクして部活をしたら元気になったこともあった。

汗をかくために「そうだ踊ろう!」と思いつき、ひたすら好きな音楽をかけて、踊る…水を飲む…踊る…水を飲む…楽しくなる。

子どものころから踊るのが好きだったそうで、「おどって~おどって~おどって~」といいながら、身体を動かしているかわいらしかった頃の私が実家の8㎜ビデオに残されている。小学生から中学生にかけては新体操をしていて本当に大好きだった。辞めた後もまたいつか踊りたいとずっと思っていた。職場でもチアダンスして楽しかった。踊ることは私のアイデンティティだと再確認する。

本当に具合が悪くて動けない人は、ちゃんと布団の中で休んでください。

おかゆを食べて、ひたすら踊って、いっぱい水を飲んで、一晩寝たらほとんど元気になった。念のためもう一日休みを取った。


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続く。