日本人が来た。

事務所が主催してその地元の企業が派遣国を視察しに来るという、イベントがあった。

 

視察前には、配属先への連絡や説明。そして、視察前日には会食、当日は病棟の簡単な案内と活動の説明を行った。事前情報では、医療関係の業種の方はおらず、恐らく専門的な話をしてもあんまり伝わらないだろうと思い、説明内容としては、これまでの簡単な活動の流れ、海外で活動するにあたり困難と感じること、学びなどを話した。

自分が完全にモロッコ人になってしまっていると自覚はあったが改めて思い知らされた。私は、日本人のキチキチした質問を矢のように浴びて少し疲れを感じた。正直、私はそれを尋問と感じた。

いや、それにしても本当に日本人は数字が好きだ…私が知らないと言っているにもかかわらず…

わからなかったり、知らなかったり、どうしようもないことがこの国には溢れてるし、5分後の予定だってなんの確証もない国なので、過ごしていると大体のことは気にしないようになるし、この国の人たちの口癖として「マシモシュキ(気にしないよ)」と毎日のように聞くし、自分も言う。

 

30分刻みで朝から晩まで予定がぎっしり詰まった視察だそうだ…食事もその地域のハイクラスのレストランが予定されているらしい。まるで日本にいるみたいだ…

 

本当のモロッコメディナ(旧市街)や田舎に詰まっているし、そういうところへ行かないと、この国の本質は絶対に見えない。残念ながら行かないそうだ…たった10分そういう場所を歩くだけでも、見たことがあるのと見たことがないのは全く違う。

 

視察後、職場で魂が抜けたようにソファーに座る私の横に友人がお疲れと言うように座ってくれた。「日本人は、真面目で、数字が大事で、細かくて、質問が沢山あって、私は疲れたよ」というと、「そうか、可哀そうに。あんたはモロッコ人だからな、まぁ座っときな。」と彼女はわらって言ってくれる。

 

どんなピンチもしんどい時も、最後はいつもモロッコ人が助けてくれる。

でも、任期満了できる自信は全くないし、どれだけ今が貴重な2年間であると考えてみたとしても、別にいつ帰ってもいいかなとも思ってしまうくらい、失望していることもある。

 

続く。