研修生たち

約1か月ほど研修に来ていた研修生たちが、金曜日で最終日を迎えた。

同じ学校の生徒でもクールによって雰囲気が全然違う。

また、病棟で研修を始めた当初と終わりの頃でも全然違う。

今回の子とたちは本当によく頑張っていた。

 

日本でいう看護学生の実習のようなものなのだが、教員や実習指導者などがつくことはなく、放置されているか、看護師の指図されるがままに、やることをやらされているという感じ。折角学ぶための時間なのに、本当に可愛そうである。

そのため、最低限の指導などは少しずつ声かけながら行うようにしている。

日本で新人指導少ししかしてこなかったが…「手洗いをしよう」「汚いからシーツ変えよう」「携帯を充電は病室でなく自宅でしないとダメだよね」「保育器が汚いから拭こう」など、最低限のこと。

でもその最低限が実際に働いているスタッフさえもできていないから、スタッフが言っても説得力がなく、そもそも言わない…学生も「全くこき使って…うるさいなぁ」という内心の様子。

だから最近は自分自身が模範となるように、学生に手洗いを指導し、シーツを交換し、勿論携帯は充電しないが…保育器を清拭し…態度で示し続けている。すると、コイツは言うだけでなく自分もちゃんとやってるし、間違ったことを言ってはいないと理解してもらえて、少しずつ手を洗ったり、保育器を一緒に拭いてくれたり…たまに「コーキー、ここはもう私が拭いたから大丈夫よ」などと頼もしく言ってくれたり。

いつもの流れだと、「あのシノワ(中国人)のスタージ(研修生)」と馬鹿にされるところから始まる。私はただでさえ日本人の中でも顔が童顔で、おまけに背も低い。モロッコ人から見たらなおのこと幼く見えるため、どんなに説明しても間違いなく研修学生と認識される。だから、別に私が怒って言っているわけではないのに、助言や指導をすると癪に障るらしい。モロッコ人全体に言えるわけではないと思うが、彼女たちに指摘をすると大体、仕返しをしてくるという非常に迷惑なところもある。患者のためにならないからやめてくれと言っているのに、「あんたのアラビア語はわからないし、フランス語もわからないわ」と言って馬鹿にして笑ったり、わざと怒らせようと挑発してくる。自分に余裕があるときは、どうしてこんなに人間として低レベルなんだ、残念だと思うだけで収まるが、自分に余裕がないと本当に頭に来てしまう。履いている靴を本人に向けて投げ飛ばそうかと思うほど腹が立つことも、たまにある。以前は本当に何を言っているかわからなかったから、馬鹿にされていても「あーなんか悪口言われてるな~」と思うだけであったが、今の私は中途半端に語彙が増えているため、相手の言っていっていることが、なんとなくわかってしまう。そのため、知らなければ幸せなのに…ということも。

そんな悔しいことも日常茶飯事だが、彼女たちの研修の後半には、いつの間にか、「あんたはいいやつだ。良く働くから、私何か手伝おうか?」と言ってくれた子もいた。嬉しさと動揺で一瞬耳を疑った。

また少し前に、看護長が研修生に「君は今日一日コーキーとペアで働いて学びなさい。彼女は日本の小児看護師だから。」と説明をしてくれた日があった。その一言があるだけで、彼女たちの私への態度が全然違う。彼女は最初から最後まで困ったら私に質問しに来たし、私のやり方も真似してケアをしてくれていた。

それでも学生たちは、また次の研修先に行けば元通りに戻って、椅子に座ってずっとスマホをいじっているかもしれない。でも、少しでも、患者さんのためにちゃんとケアをしないといけないんだと心のどこかに残ってくれたらいい。難しい。

そして、中途半端に話せることで、私に仕事を押し付けて違う部屋で休憩しているスタッフに対して苦言を申しつけることもできるようになった。元々モロッコ人は後腐れない人がほとんどであるため、ある程度スタッフと一緒に働いてきた時間がある今の私は、その場でちゃんと意見を言った方がその後その人といい関係が築けることが多い気がする。その場でガミガミ反論してきても意外と本人は後でしっかりと反省していることも多い気がする。あとになって「さっきは悪かった」と言ってくる人もいる。また、先日は、一人の看護師(そこまで仲良くはない人)が私に近寄り「あんたが保育器を拭いていると教授が褒めていたよ」と言ってきた。私は、気味が悪い、なんの意図があるんだと考えていると、「だから、保育器のココも拭いてほしいんだって」と言ってきた。「じゃあ、君がやれ」とは言わなかったが、私の表情にはそのように書いてあったであろう、返す言葉がなかった。

私は居ないほうがよっぽどいいのではと思う。職場では看護師や研修生から仕事を押し付けられることから逃げ回り、ひたすら保育器を拭いたり、哺乳瓶を洗ったり…モロッコ人はやってくれる人がいるならその人にやらせておこうという文化と習慣のある国だから、頑張っている人がいるから、自分も‼とは決して考えない。そうしたらやればやるほど、本人たちへ悪影響な気がしてならない…

 

そうやってモロッコ人とバチバチ喧嘩するようになってある日、日本人と電話しているときにも「ちょっと話を最後まで聞いてよ…現地の人みたいに…」と言われてしまった。

なんか、どんどん人として悪くなってる気がする。とても嫌だ。

すごく頑張っていた子たちとバイバイ。とても寂しい。またどこかで会えるといいな。

 

カサブランカの郊外にあった扉。どうしてモロッコってこんなに可愛いんだろう…

 

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続く。