ラマダーン中のビスミッラー

ヒジュラ歴の9月にあたるラマダーンムスリムは、日の出から日没まで飲食を行わない。

私は体調の不安もあり、ラマダーン開始日から2日間の土日は昼間、家で食事をいただいた。

当初から二年目にはがっつりラマダーンのサイマ(断食)するつもりで入国した。でも今の時点で、ムスリムのことをもっと理解したいし、イスラム教のことももっと知りたい。

そのため、仕事のある月曜日から金曜日までは、体調の許す限りサイマ(断食)に挑戦してみることに予定変更。

看護長には、「食べなさいよ~‼」と言われた。恐らくみんなが空腹と疲労で働き者にならないからせめてムスリムでない私くらいチャキチャキ働いて欲しかったのでしょう。看護長、すみません。

その他の同僚たちや、面会に来ている母たちには、

「君もやるのか!頑張れよ!最後に何時に食べればいいのかわかるか?何時から食べていいかわかるか?今日は●時●分だよ!彼女、断食するんだって。」

朝、数人に断食頑張ると言ったが、夕方にはみんなが知っていた。さすがお喋りモロッカン。いや、日本の病院も一緒か。

 

昼過ぎが空腹の辛さのピーク。13時から15時くらいがきつかった。17時を過ぎるともうカウントダウンが始まり楽になった。

病院の方は、朝の始業がいつもよりも遅めスタートで人数も少なめな勤務体制。朝の回診にちゃんと来ている女医さんたちのたくましいこと。彼女たちは日中もチャキチャキ働いてる。看護師は比較的、事務仕事を率先している印象。なぜなら、なるべく座ってたい。私も椅子ばかり探しながら赤子にミルクをあげる。そして、数名いる男性医師はどこへ消えたのか。たまたま休みばかりなのか。真相は分からない。

15時を過ぎてからのスタッフはグロッキー。さすがのモロッカンも口数が少なくなっていた気がする。スタッフが怖すぎて仕事終わりに「お先に失礼します」と言えなかった。

私より先に上がったスタッフも、みなこっそりと帰っていく。

対称的に、いつもと変わらないのは面会に来るお母さんたち。彼女たちは授乳の必要があるため断食を免除される。自分で期間をずらすそうです。病棟で誰よりも元気そうに見える。グロッキーなスタッフ横目に、お母さんたちは楽しそうにお喋りしながら、仲良く授乳。

 

普段仕事中にお祈りするスタッフは数人だが、ラマダーン中は入れ替わり立ち替わり多くのスタッフがお祈りしていた。朝には電車のなかでコーランを読んでいる人も何名か見かけた。モスクに入っていく人も普段より明らかに多い。

ムスリムにとって、最も大切で神聖な祈りの1ヶ月が始まった。

 

夜ご飯を作るのがとても楽しかった。あと●分でご飯が食べられる。10分前からスプーン片手にテーブルでスタンバイ。

 

夜、日没を報せるアザーン(お祈りの報せ)がなり、

 

「ビスミッラー(いただきます)」

 

お粥を口にいれた瞬間の美味しさと幸せで涙がボロボロ止まらない。

 

食べられるってこんなに幸せなんだ。

食べるってこんなに美味しいんだ。

 

当直でご飯食べ逃した日本の医者も同じくらいの時間ご飯食べずに働いているかもしれないが。

 

こちらに来てから絞めた鳥を買ったり、生活のなかで、食べ物の命を頂いて生かされていることをとっても感じることができる。

 

ラマダーンの1ヶ月、毎年サイマ(断食)しているムスリム

本当に尊敬する。

 

折角、イスラム圏で生活するという貴重な経験をする機会を得たからには、思う存分ここで得られることから沢山学びたい。

 

体調をみながら出来る限りの挑戦を続けたい。
f:id:kei-iinuma:20170530061305j:image